映画の時代 -6-



(C)当時の映写室の映写機 illustration by MOON

●映画館の覗き窓

インターネット自体が覗き窓のようなものだ。それも、限りもなく奥が深い覗き窓だ。 覗き窓には好奇心をそそられるものがある。 今回は映画館の覗き窓について書いてみたい。
映画館に行った方なら誰でもご存知だと思うが、 フィルムの画像をスクリーンに送る映写室の壁に、左右二箇所の覗き窓がある。 映写機を操作する映写技師がスクリーンを見る時に使うのがこの覗き窓だ。 その他にも覗き窓は沢山ある。
映写室の中にある映写機本体にも、いくつもの覗き窓がある。 その一つに、映写機には強力な光源を発生させる装置「照明釜」があるが、 ドアに当たる部分に濃い色のガラスがはめられた覗き窓がある。 いずれの覗き窓も、映写技師が映画を映す場合、これがなくては仕事ができない。 映写技師が映写機を使ってフィルムを映写する手順は、

(1)予め映写機に35ミリのフィルムを装填しておく。
(2)タイミングを見計らって、まず、照明釜の中心にある
アーク灯の先端を接触させ高圧電流を流して発光させる。
(3)フィルムを送るためのモーターのスイッチを押す。
(4)最後にレンズの前の遮断機を開ける
フィルムの画像がスクリーンに写る。(2〜4まで10秒位)

この一連の操作の繰り返しが映写技師の主な仕事となる。
映写機を操作している時に一番神経を使うのが、 発光させた後の光源となる二本のアーク灯の維持管理だ。

まず、釜の外側のハンドルを左右の手で回し、釜の中心に設置してある左右2本の アーク灯の先端部分を接触させる。「パチパチ」という音と共に 強烈な光と熱を発しながら、2本のアーク灯は燃焼し続ける。 映写しているフィルムが終わるまで、良い状態で燃焼させなければいけない。 映写機で映画を写している時に、スクリーンの映像を 映写室の覗き窓から見る。 だが、ついうっかり映画に見入ってしまうと、映像が消えて場内を暗転させてしまう。 こういう失敗は,私も何度か経験している。

光源となる2本のアーク灯は、いわば花火のようなもので時間の経過と共に、 先端部分が溶けていく。 互いの先端部分が離れ過ぎると、光が弱くなりやがて消えてしまうのだ。
音声は聞こえるのに場内は真っ暗闇。そうなったら場内はブーイングの嵐ということになる。 映写技師は、最良の映像をスクリーンに投影するために、覗き窓を頻繁に見ながら アーク灯を最適な状態に調整しておかなければならない。
当時の映画は一時間半もので、35ミリのフィルムが10巻から12巻程度。 1巻上映するのに9分位で終わってしまう。
映写が終わったフィルムは巻戻しをして元のアルミのケースに入れ、 次のフィルムを映写機に装填し、映写機の切り替えのタイミングを待つことになる。 その当時の映写技師は結構忙しく、 スクリーンの映像を見ながら感動しているゆとりなどなかったのだ。
映画館の手伝いは中学生の時が一番多かったと思う。高校の後半に入ってからは、 さすがに映画館に入り浸りというわけにはいかなくなってくる。


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