奥三面問題の奥の深さ

2000年2月29日新潟日報夕刊に掲載したコラム【晴雨計】5回目




津川町「ふるさと交流河屋敷」で講演した時の姫田忠義氏
(1999年9月19日撮影)

奥三面問題の奥の深さは例えようもない。すべての県民にまず、私たち郷土の問題として奥三面の問題を知ってもらいたい。と私は考えてきた。それを知る手がかりとして、姫田さんが撮った記録映画「山に生かされた日々」がある。記録映画として高い評価を受けているこの映画を見れば問題の本質が見えてくる。しかし、一般の市民が十六ミリフィルムで上映時間が二時間半の映画を見るには簡単にはいかない。映画をダイジェスト版にしてビデオ化すれば、多くの県民に見てもらえる、と思うのだが姫田さんの映像作家としてのこだわりがそれをさせないのだろう。かくしてこの映画を見た人は未だに少ないのが現状。
嬉しいことに、NHKのETV特集として1月24日から三夜連続で3回にわたり姫田さんが撮った3作品が放送された。「日本・定点の記録40年」である。3回目に「山に生かされた人々―越後奥三面」が放送された。姫田さんがこれまで記録してきた奥三面の膨大な映像に、昨年の秋に収録した映像を加えて再編集し、45分にまとめたものだった。この作品は一見地味な映像かもしれないが、日本人が忘れている大切なものを教えてくれる作品となっている。さすがNHKと拍手を贈りたい。冒頭の映像に姫田さん自身の響きのある声でナレーションがかさなる。
「人は時間とともに生き、厳しい風雪とともに生きています。1960年代、昭和30年代半ば以降、私たちの日本列島は、激しい高度成長とその余波のために激動し、激変してきました。この間、40年。何が消え、何が生きつづけてきたのか。そして、何を次世代へ伝えうるのか。山・海・山、日本の三つの定点にカメラを据え、それをみつめ、記録し、考えつづけてきました。」
過去・現在・未来、そして人間を見つめる映像作家としての、ゆるぎのない視座。奥三面の全容をとらえ、見る人に何かを訴え考えさせる。姫田さん入魂の作品となっていた。この番組は3月5日に再放送される。



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